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太陽までの距離

太陽までの距離を測るアリスタルコス(Aristarchus)の実験

[3]"A Manual fo Greek Mathematics" によれば、 "ユークリッド(Euclid, 325BC - 265BC) とアルキメデス(Archimedes, 287BC - 212BC) の間には、
古代のコペルニクス(Copernicus , 1473 - 1543) と呼ばれている有名なアリスタルコス(Aristarchus of Samos, 310BC - 230BC) がいた。
多分アルキメデスよりも約25年早く、アリスタルコスは281 B.C.に夏至の観測をしていた。...しかしギリシャ人は彼を"Aristarchus the Mathematician"
の称号で認識していた。その称号を彼は、数学の天文学への輝かしい応用によって確固たるものとした。その彼の仕事の一つが、
現存する著書 "太陽と月の大きさと距離" (On the sizes and distance of the Sun and Moon) である。彼の主な関心は天文学であったことが伺える。
アリスタルコス(Aristarchus )の最高の業積は、コペルニクス(Copernicus ) に先立って太陽系について打ち出した仮説である。...
彼の仮説はいわゆる天動説である。
"地球は太陽のまわりを円周状に回る、太陽はその軌道の中心に位置する、...
地球が太陽を回る軌道の長さは、宇宙全体の大きさに比べ非常に小さい。"

基本的な仮定

アリスタルコス(Aristarchus)は幾つかの仮定をした。その内2つを以下に述べる。[3]

(1) 月が半月の時、暗い部分と明るい部分の境目の線の方向にが目が向いているとする。その時、太陽、月、地球それぞれ
の中心をS、M、E、とすると、月の中心で直角となる三角形が形成される。

(2) 月が半月になる時、∠SEM は直角の (29/30) である。(即ち、直角三角形の∠SEM は 87度である)

下図に彼が太陽までの距離を地球と月の間の距離の何倍になるかを測るために用いたモデルを示す。
角度∠X は正弦月(first quarter moon)の日没時に測れる(正弦月が天頂にあり、太陽は水平線に沈む瞬間)。
アリスタルコスは∠SEM を 87度と仮定、しかし実際には89度50分である。
彼の時代で可能な測定器をもってすれば、この値は最も精度の高いものであったに違いない。
読者は 半月の夕方、日の沈む瞬間、自分の立っている地点 、月の中心、地平線にそれに沈もうとしている
太陽の中心のなす角度 SEM をどうやって測ったのだろうと考えてみては どうでしょうか。
但し、気を付けてもらいたいのはアリスタルコス は晩年失明している。 
太陽を直接見ていたせいではないかといわれている。 


************************ Aristarchus_00.dwg ************************

実際の寸法でのモデル

太陽、月、地球の大きさと、それらの地球までの距離を次の表に示す。


半径-km(マイル) 地球の半径に対する比 地球までの距離-km(マイル) 月-地球間の距離との比
太陽 695,000 (431,945) 109 147e6~152e6 (91.341e6~94.448e6) ~41
地球 6,378 (3,964) 1.0

1,737.4 (1,079.8) 0.273 356,749~406,282 (221,000~253,000) 1.0

このモデルでは、月と太陽がX-軸上に来るようにし、地球が月-地球の距離の分だけY-軸で下がるように設定した。
実際のモデルはこのようになる。


************************** Aristarchus_03.dwg **************************

次の図は、月-地球の線からの角度が87度である地球の中心からどのようにして線が引けるかを示す。
アリスタルコスの仮定によれば、緑色の線が月-太陽の線と交差する点が太陽の位置である。


*************************************** Aristarchus_01.dwg ***************************************

結果

アリスタルコスの結論:

"地球から太陽までの距離は、地球から月までの距離の18倍より大きく20倍より小さい。"

月と地球間の平均距離を約 384,400 km (239,000 マイル) とすると、アリスタルコスの結果は、
距離が 384,400 x 18 = 6,920,000 km より長く、384,400 x 20 = 7,690,000 km よりも短いことを示す。
∠X = 87度に基づく実際の結果は 7,335,000 km で、彼の概算した範囲内の正しい結果となる。
アリスタルコスの定理を証明するためには、特に3度とか1度の小さな角の Sin とCos の三角関数に相当する値を
整数比の形で求めることが必要であった。(ギリシャの数学は 計算は小数でなく 整数でおこなわれた。 少数を使う計算は 
ずっと後世の発明なのである。) 彼は、これらがある境界間(上限,下限)にあることを示した。
そのこと自身 難しい問題だったのである。なぜなら 読者は、三角関数がアリスタルコスの時代から1500年以上あとに
考えだされたものであることを思い出して頂きたい。


*************************************** Aristarchus_02.dwg ***************************************

この図面の作成方法:
   プログラム Aristarchus_model.lsp を   (load "Aristarchus_model") でロードする。
  コマンド ラインから (setup_aristarchus)  と実行命令をタイプする。

次にウィンドウを2つの水平なビューポートに分割し、月-地球の部分を拡大(ズーム)する。

参考文献

  1. Atlas of the SKIES, Surrey,England: TAJ Books,2003

  2. Heath, Sir L.H.: A History of Greek Mathematics,Vol II. Dover Edition, 1981. Originally published in 1921

  3. Heath, Sir L.H.: A manual of Greek Mathematics. Dover Edition ,1963. Originally published in 1931.

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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也 宛てにお願いします。

Last Updated July 9-th, 2006

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